ファドとは

ポルトガルの民族音楽(あるいは大衆音楽)です。

フランスにシャンソン。スペインにフラメンコ。イタリアにカンツォーネがあるように、
ポルトガルにはファドがあります

ファドは主に、人生の叙情、哀愁を文学的に歌う音楽で、ギターラと呼ばれる独特なギター、ポ
ルトガルギターを伴奏に、コインブラやリスボンの酒場で歌われます。

フランス
のシャンソンのようなユーモラスな男女の愛の歌よりも、ファドは人生の悲しみ、哲学、
叙情を難解な詩に
したものが多く、他のラテン音楽には無い独特な影を持っています。

 





「亡き女のファド」。あくまで日本語歌詞で歌うのも、こだわり。
しかし、詩のテーマは、あくまでポルトガルや、スペインの風土を
扱っている。

「墓の魚」では、作曲家・黒実音子がオリジナルでファドを作曲しています。
らく日本で唯一、オリジナルでファド作曲し、歌っている楽団になりま
す。


ただし、黒実の作るファドは、歌詞のテーマが極端に死と墓の哲学に偏って
いるのと(現地のファドもメメントモリ哲学を歌ってはいますが)、日本語の
歌詞で歌うなどの相違点があります。

作曲家は、自身のファドを、「ファド・マゴチ(蛆虫のファド)」や、「ファド・
エンテーホ(葬儀のファド)」などと呼んでいます。





■そのファドの中身は何なのか?

黒実は自身の様々な作品の中に、古典的で文学的な技法を取り入れようとし
ている作曲家です。
そのテーマこそ、メメントモリ(墓想)であり、信仰であり、貧者のピカレス
クであり、あるいはそれを全て含め、この世をヴァニタス的に、悲喜劇的に
語ったものと言えます。
それは[港に捨てられた蔓脚類の躯の虚しさを歌った歌]であり、[殺害された
乾いた珪藻の歌]、[海底で朽ちていく船乗りの躯の歌]です。
[キリスト教信仰とポルトガル漁師の歌]なのです。

シェイクスピアや、ゲーテ、ベケット
に影響を受けながらも、あくまでその
本筋をイベリア精神に求める黒実の本質は、言うならば[捨てられた聖書の物
語]、[ゴミ捨て場の信仰]、[魔女と聖者の悲喜劇]という南欧でよく題材にさ
れる宗教的なテーマを内包しています。
それはマックス・ジャコブの詩THE BEGGAR WOMAN OF NAPLESの様な
[魂の影]の表現として黒実の作品の中に現れるのです。

日本ではほとんど根付かないこの「ラテン的な風刺」の世界を、ぜひ、酔狂
な好奇心からでも覗いていただけたらと思います。


「墓の魚」のオリジナルのファドを、ぜひお楽しみ下さい。


「埋葬虫のファド」は、南ヨーロッパには多い墓想哲学を歌った黒実の
ファドの代表曲。歌に語りや演技を混ぜた、こうしたファドを黒実は
「ファド・テアットロ」(劇場のファド)と呼ぶ。


            
            
      




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