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「亡き女のファド」。あくまで日本語歌詞で歌うのも、こだわり。 しかし、詩のテーマは、あくまでポルトガルや、スペインの風土を 扱っている。 |
「墓の魚」では、作曲家・黒実音子がオリジナルでファドを作曲しています。 |
■そのファドの中身は何なのか? 黒実は自身の様々な作品の中に、古典的で文学的な技法を取り入れようとし ている作曲家です。 そのテーマこそ、メメントモリ(墓想)であり、信仰であり、貧者のピカレス クであり、あるいはそれを全て含め、この世をヴァニタス的に、悲喜劇的に 語ったものと言えます。 それは[港に捨てられた蔓脚類の躯の虚しさを歌った歌]であり、[殺害された 乾いた珪藻の歌]、[海底で朽ちていく船乗りの躯の歌]です。 [キリスト教信仰とポルトガル漁師の歌]なのです。 シェイクスピアや、ゲーテ、ベケットに影響を受けながらも、あくまでその 本筋をイベリア精神に求める黒実の本質は、言うならば[捨てられた聖書の物 語]、[ゴミ捨て場の信仰]、[魔女と聖者の悲喜劇]という南欧でよく題材にさ れる宗教的なテーマを内包しています。 それはマックス・ジャコブの詩THE BEGGAR WOMAN OF NAPLESの様な [魂の影]の表現として黒実の作品の中に現れるのです。 日本ではほとんど根付かないこの「ラテン的な風刺」の世界を、ぜひ、酔狂 な好奇心からでも覗いていただけたらと思います。 「墓の魚」のオリジナルのファドを、ぜひお楽しみ下さい。 |
「埋葬虫のファド」は、南ヨーロッパには多い墓想哲学を歌った黒実の ファドの代表曲。歌に語りや演技を混ぜた、こうしたファドを黒実は 「ファド・テアットロ」(劇場のファド)と呼ぶ。 |
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