「イベリアの豚・夜の七つの幻想 [記録としての古詩と当世詩]」
第1の月 荒唐無稽な叙情 
〜ペル・ラアメスの犬〜[古詩]

作詞作曲 黒実 音子




1
ああ、荒唐無稽な叙情を
死者の口紅から語ろう
寂れた墓石に吹き抜ける風と、棺桶のきしむ音こそが真実

人は夜の王に恋する
叶わぬと知りながらも
共産主義の夢に
身を捧げた男達のように

ああ 町人が恋を語り
詩人はあの娘の歌を
鳥達は愛をささやき
街が愛に溢れているのだとしても

我々はやはり孤独なのだ
それは文学の文字が虚しいように
夜明け前のバイロ・アルト通りをただ響く音のように


2
貴方は未来のファラオ
多くの罪を侍らす悪王
私はしがない囚われの娘

ゴルゴダの男も
バビロンの娼婦も
ああ 薄情な事 
人は他者に関わらずに歌う

ああ 貴方には貴方の悲しみが
私には私の声が
人は見る事がないのだ
お互いの魂の夢を

ああ どうか詩人よ
唄い語り伝えておくれ
愚かな女の墓に添える言葉を
遠いレジスタンス達の歌を

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ああ、天使達の祝福の鐘の音 厳粛なる浄化
それでも満たされない荒唐無稽な叙情
魚の骨よ、教えておくれ 業の深い罪を許す祈りを
それでも何もかも砂になるだろう
懸命な生き方すら
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あるいは、違う結末も望めたのだろうか?
そう、これは劇なのだ!! 脚本の無い遊びなのだ!!

ああ詩人よ!! だが、空虚な墓石が讃えるものは
言葉と、破れた夢と、死んだ魚の骨

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