「墓の魚」の音楽の事をシャンソン・フュネライユ(葬送の歌)と言います。 「シャンソン・フュネライユ」は、人間風刺やユーモアに富んだフランス、スペイン文学的な歌詞を特
徴としています。
こういった彼の作品は、スペインのサルスエラや、イタリアのバッソ・ブッフォ Basso buffo (道化
のオペラ)などから影響を受け生まれた新しい音楽です。
シャンソン・フュネライユを歌う道化役者。 スペインのピカレスク(乞食)哲学を表現する道化(Clochard クローシャル) 破れたボロボロのタキシードを着込み、 乞食のような格好で、人生の皮肉を表現する
しかし、彼の作品の歌の詩のほとんどが、様々なスペインの民俗学を基調とした魔女の抒情詩になっている
のが「シャンソン・フュネライユ」の最大の特徴と言えるかも知れません。
魔女というのはキリスト教に対する異教徒ですが、その魔女達が迫害された者として、社会(当時のキリス
ト教社会)に辛辣な皮肉と風刺を込めて、歌う歌(ピカレスク)が「シャンソン・フュネライユ」なのです。
また、反対に教会信仰の歌も、彼の作品では多く扱われます。
彼の作品の背後には「人間の信仰」の哲学が流れています。
「墓の魚」で、道化師が演奏する19世紀のギター
古風な作り方をした彼の作品は、クラシック好きの方はもちろんの事、シェイクスピアの道化芝居、スペ
イン文学、フランス詩、シャンソン、ファド、タンゴ、ジャズ、ミュージカル愛好者など、様々な人に楽
しんでいただける独特な音楽となっています。
ポルトガルのファドが、黒衣に身を包んだ喪に服した音楽であるように、クラシックがレクイエムを歌う
ように、「シャンソン・フュネライユ」は、「葬儀の歌」を歌います。
しかし、それは非常にラテン気質で明るいものである事を特徴とします。
シャンソン・フュネライユを演奏するコントラバス奏者
メキシコの死者の日のように、厳格、厳粛でありながら、カラっと陽気である、というこの悲喜劇的な
感覚は、キリスト教信仰と、ラテン哲学が共存している南欧諸国の独特な精神です。
それら、棺の中の虫の語るシニカルな生への究極の皮肉、風刺を、道化師(歌い手)達が、早口で歌う様
子は、まさに十六世紀スペインのコメディア・デ・サントス(宗教喜劇)の再来のようです。
女道化師「仕立て屋のオチ」による道化芝居のシャンソン・フュネライユ ものすごい早口で滑稽にまくしたてられる。
「死の舞踏」というクラシックのテーマで作られたシャンソン・フュネライユ
フュネライユとは、フランス語で「葬儀」という意味です。
黒実音子の作品には、人生を壮大な葬儀と見なす文学的哲学が流れています。
「人生は虚しい。人間はいつか死ぬ。
死んだら聖職者も、乞食も、詐欺師も、みんな同じだ。墓の中だ。
だから生きている間は好きに生きよう。
ずるくて情けないのが人間。
そんな人間のくそったれな人生こそが素晴らしいのだ!
ダメに生きても、立派に生きても、好きに生きても同じ人生」
そんな皮肉で、だけれど、カラっと明るいいたずらなラテン哲学を「シャンソン・フュネライユ」は歌
います。
シャンソン・フュネライユを演奏するフラメンコギタリスト
さぁ、皆さんの心の底で眠っている文学的精神をくすぐるプレシオジテな幻想の旅へ「墓の魚」と共に
出かけてみませんか?
こんなバンドは他には絶対にないです!
スペイン娘「貽貝(ムール貝)のわしな子」の歌う「イワシの埋葬」フ ラメンコのリズムでメメントモリ哲学を歌っている。
教会音楽的なシャンソン・フュネライユ
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