「逆さまのミサ」より
腐敗した魚のタンゴ
[ヤン・ファン・ケッセルの「魚の絵」に捧ぐ歌曲]
〜または11拍子のタンゴ〜
作詞作曲 黒実 音子
1.
陽気で浅薄、ずる賢い海の古老よ
魚の屍のように、唇には青ざめた化粧
何くわぬ顔で人を裏切り
祭るは俗世を逞しく生きる泥水の霊
腐敗に喰らいつくウジこそが我々の姿
人を信じない臆病な獣のように
そうして何百年も彷徨ってきたのだ
悲しみを黒き布の中に隠して
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喜びと愛、嫉妬と偽りを
くり返し、我々は生きる
夜の海に浮かんだ腐った魚のように
失ってしまうのだ
帰る場所 笑う友も
戻れない無限の道を
ただひたすら旅をする女の骨
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2.
裏切り、切り捨てた者達を思う
裁判の火の中を一人、生き残った蛾よ
どこまで飛べればお前は満足なのか?
醜く生きあがけば楽園へ行けるのか?
人生とは黒い魔術に似ている
楽しみはするが、何も惜しまず
そうやって涼し気に進んで行くだろう
主の楽園を目指し
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喜びと愛、嫉妬と偽りを
くり返し、我々は生きる
夜の海に浮かんだ腐った魚のように
失ってしまうのだろう
いつかあなたや、全てを
だが、時は過ぎ去ってゆく
まるで虚無を楽しむ為に
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素晴らしき日々、再生と未来に
向かって、我々は生きる
夜の海に浮かんでいたしがらみも、
いずれは消えるだろう
夕暮れの向こうに楽園はある
いつか私もそこに行こう
魔法など無い、
そこにあるのは、
腐った魚と無垢な希望、悲しみの水
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